2014年8月13日水曜日

水平軸から垂直軸に、立ち位置を変える(人生が私に何を期待しているのか)


先日の小児がん脳腫瘍全国大会でフランクル研究の第一人者である山田邦男先生に「実存的苦悩とどう向き合うか」についてお話しいただきました。


ヴィクトール・フランクル(1905-1997)は、オーストリアの精神科医、心理学者で、ナチス強制収容所での体験を元に著した『夜と霧』は、日本語を含め17カ国語に翻訳され、発行部数は、英語版だけでも累計900万部に及びます。
まずは有名な言葉「あなたが人生に何を期待するかではなく、人生があなたに何を期待しているのか?が大切なのだ」について、山田先生に翻訳されたそれでも人生にイエスと言う』から次の文章を見てみましょう。

あるとき、生きることに疲れた二人の人が、たまたま私の前に座っていました。・・・二人は、声をそろえて言いました、自分の人生には意味がない。「人生にはもう何も期待できないから」。二人のいうことはある意味では正しかったのです。けれども、すぐに、二人のほうには期待するものがなにもなくても、二人を待っているものがあることがわかりました。・・・そこで大切だったのは、カントにならっていうと「コペルニクス的」ともいえる転換を遂行することでした。それは、ものごとの考えかたを180度転換することです。その転換を遂行してからはもう、「私は人生にまだなにを期待できるか」ということはありません。いまではもう、「人生は私になにを期待しているか」と問うだけです。人生のどのよう仕事が私を待っているかと問うだけなのです。
 ここでまたおわかりいただけたでしょう。私たちが「生きる意味があるか」と問うのは、はじめから誤っているのです。つまり、私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているからです。私たちは問われている存在なのです。(それでも人生にイエスと言う』VE・フランクル著 山田邦男/松田美佳訳 p26,p27


そうです。問うているのは人生の側で、私たちは問われている存在として自分でその意味を見出して行かなければならない、ということです。

そして山田先生は、実存的苦悩とは何かをふまえた後で、「実存的苦悩をいかにして克服するか」について、いくつか文献や例を挙げながら丁寧にお話しいただきました。


そこで示された苦悩の克服方法の1つに「水平軸から垂直軸へ価値観を転換する」というものがありました。

水平軸とは・・・ 相対的、有限、物質的、相克的  

垂直軸とは・・・ 絶対的、無限、精神的、相乗的


水平軸とは・・・ 富、地位、学歴、美貌、健康など  

垂直軸とは・・・ こころ、愛、美、真理など


水平軸とは・・・ 自己中心的、我欲的

垂直軸とは・・・ 存在中心的、無我的


水平軸とは・・・ 自分のため

垂直軸とは・・・ 自分は何のために


水平軸とは・・・ 「私は人生から何を期待できるか」

垂直軸とは・・・ 「私は人生から何を期待されているか」


 水平軸とは・・・ 苦しみの原因 


 垂直軸とは・・・ 喜びの源泉

水平軸の価値観とは私たちの多くが無意識に抱いている価値観です。それに対し、垂直軸の価値観とは、言われれば「ああそうだ」と思えるものの、なかなか意識しないと持ち続けることの難しい価値観、しかしながら間違いなく尊い価値観であるといえます。

「このことをどう考えるのか?」と自問したとき、発想を180度転換して物事を見てみることが、苦悩を乗り越える一助になるのかもしれません。

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