1.自分にとって大切なものの変化
一般の人が関心をもつものに関心をもてなくなります。それが「価値あること」、「意味のあること」だとはどうしても思えなくなるのです。そしてそのような形あるものよりは、もっと精神的なものに価値を見出しはじめます。神谷美恵子さんのいう「精神化」です。
世俗的成功、物質的豊かさ、家庭の幸せ等を追い求めることが色褪せてしまいます。言葉にできないもの、精神的なものに充足と安らぎあることを知り、人生が自分に与えた使命感に価値を見出すようになります。
2.言葉や思考と苦悩の関係に対する気づき
「考える」ことによって問題は解決できると信じていましたが、心の中のおしゃべりがむしろ自分を苦しめていることに気づくようになります。しかしそれを無理に停止させることはできず、コントロールすることも難しいことを知ります。苦痛という一次的な問題を回避しようとして、さらなる苦悩に拡大していく悪循環のプロセスを理解しはじめます。言葉や思考の限界を知ることが大切であることに気づきはじめます。
3.感情に対する姿勢の変化
悲しみ、不安、そして怖れといった感情を、ひとつの対象として見ることに慣れてきます。いま、自分がどのような感情を抱いているか、どんな感覚を感じているかの自覚が高まってきます。それから逃げたり、無理に抑えつけたりするのではなく、無理なくそれらと共にいることが、だんだんとできるようになります。
4.価値観の相対化
このような理不尽さを経験しますと、強い無常感を抱くようになります。形あるものはやがて崩れ、絶対なものなど何もないと分かります。当たり前であると考えていた価値観が、たんに多くの人々が慣習的に採用していたにすぎず、時代や社会によって容易に変化するもの、相対的なものにすぎないことに気づきはじめます。周囲のそのような習俗的な価値観によって非難されることがあっても、上手に受け流せるようになります。
5.自分というものに対する認識の変化
形あるものは必ず移り変りゆくもの、すなわち無常であり、自分もまたそうであると認識します。思考や感情を対象化することが定着するにつれて、それまで思っていた自分が、本当はそんな固定したものではない、自分で自分のことをそう思っているだけ、すなわちそれは概念としての自己にすぎないことに気づきはじめます。そして、自分とはいったい何なのか?ということをあらためて問うことになります。
6.人生に対する見方の変化
あたかもひとつの物語が展開しているように人生を感じる瞬間があります。人生とは努力して切り開くものだという考えは、理不尽さの経験によって消し去られました。自分が努力して人生の目標に到達するというより、人生が自分を運んでいくのであり、人生が自分に期待している何らかの意味があるように感じます。そうした中で新たな「生きがい」や「使命」と呼べるものを見出す人もいます。
認知行動療法の一種ですが、関係フレーム理論、実存心理学、仏教心理学などが統合されたセラピーの体系であるといえます。「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる」(スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス 著、星和書房)より、ACTの簡潔な説明を以下に引用しておきます。
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